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いま、何か一曲かけてやるよと言われれば、 迷わず『スローなブギにしてくれ』と答えるだろう。 声がふるえなければいいが、と思いながら。
No.
2026/06/10 (Wed) 12:54:51

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No.4
2010/08/11 (Wed) 03:56:40

8時起床。約3時間の睡眠。風のない朝。暑く、そして眠い。
すぐに洗濯機を回し、ハムサンドとコーヒーの朝食。


午前中は作品データのまとめや明日のフリーペーパーの取材のための下準備をしながら過ごす。まだまだバンコクの地理には疎いため、取材先の場所を再度確認。さらに内容も再びチェック。たとえば日本で同様の仕事を受けたとしたら、『まあだいたいこんなもんだろ』という経験上の物差しですべてを測り、あとは現場で“成り行き対応”という具合だろう。しかしここはバンコク。しかもこの会社の仕事は初めてだ。まるで社会にデビューしたての頃のように、あれもこれも気になって仕方ない。こういうのって、久しくなかったな。
しかも明日の取材は男性専用の日系美容室の体験取材であり、その体験モデルをも務める羽目になっている。日本じゃ完璧に断っているだろう。食べていくことに切実な今、髪にハサミも入れられるし、平気で誌面にツラも出せるってわけだ。
さて、どうなることやら。


午後はBTSと地下鉄を乗り継ぎ、天才WebデザイナーK氏が所属するB社に二度目の訪問。K氏からタイのプリンター事情についてレクチャーを受け、デザインカンプにおける出力見本の重要性を改めて感じることに。あたりまえのハナシだ。日本にいるときは口を酸っぱくして部下たちに説いていたこと。もちろんタイでは日本の品質のようなものを得ることは難しいけれど、しかしやはり自分のイメージを明確に伝えるべく色や質感にこだわっていかなければいけない。ここはタイだから‥‥という『アウェー感』がどこかにあり、本来のポリシーやこだわりに鋭さがなくなっているのかもしれない。さらにカネが無いという現実。どうも弱腰になって、ついつい安いものに手が出てしまう。決して高価なものを手に入れるだけが良いとは思わないが、もう少し事前のリサーチと現状の把握に力を注ぐべきだったのかもしれない。


それから近くのデパートで少し時間をつぶし、仕事が終了したK氏と再び落ち合い食事へ。K氏が絶対にお薦めだというホワイクヮンの韓国料理店。彼は安くて美味い店をよく知っている。食事を始めてしばらくするとK氏の上司であるT氏も合流。
T氏はバンコク在住歴15年という強者。二人の大先輩が僕のために食卓を囲んでくれるということが本当にありがたい。この縁を何とかしてさらなるものに。そう心に誓うばかりだ。
最後に出された海鮮鍋のあまりのおいしさに誰もが感動し、美味なる余韻を残しつつ、お開き。


今日も雨のなか帰宅。シャワーを浴び、ウイスキーを一杯。
さすがに体が寝不足を感じている。今日はもう寝ることにしよう。


慣れない外国での仕事に不安や緊張はつきものだ。慎重になるのはいい。だが、弱腰にだけはなりたくない。

ここはアウェーじゃない。もはやホームなのだから。
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No.3
2010/08/10 (Tue) 05:42:56

6時半に目が覚めた。もう少し寝ようと思ったが、それ以上は眠れないようだ。あきらめて起床。
マヨネーズを塗ったパンにローストチキンの残りを無造作にはさみ、そのまま食す。醤油を少々加えたかった。しかしここにはない。キッチンで立ったまま3分足らずで朝食が終了。


シャワーの後、作品のデータ整理の続きを開始。が、そこで事件発生。プリンターがおかしい! 印刷できない!
見るとプリンターの小さな液晶画面にインクカートリッジの異常を伝えるメッセージが出ていた。
カートリッジの異常って‥‥おいおい最初から異常だったはずだろ‥‥。


実はこのプリンター、タイに来て購入した新品なのだが完璧な改造モノである。インクコストを押さえるため、本体の側面に4色のインクが詰まったタンクが取り付けられている。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック。各色ごとに配列された4本のタンク。しかも内部の純正カートリッジは取っ払われ、そこにはタンクからのインクを送り込むために4本の管を生やした異形のカートリッジが装着されているのだ。
商品購入時、その場で約30分の大手術の末に誕生した改造プリンター。その姿は理科室で鎮座している何かの実験装置のようだ。
この改造によってインクの減りが通常の1/10になるという。改造はこの国じゃトレンドだとか。恐るべしタイランド。


郷に入れば郷に従えとの思いから、プリンター購入の際に付き添ってくれたN氏(ほとんどタイ人化した日本人)の強い薦めで大改造したプリンター。そいつが今、見るからに異常な形をしたカートリッジの『異常』を告げている!そりゃないだろ!

アチコチいじくり回しても、ちっともラチがあかない。取扱説明書もタイ語なので完全にお手上げ。そもそも改造モノに従来の取説は通用しないだろう。
もともと機械に弱い僕は本気で辟易し、そして本気で焦った。明日の朝には整理されたデータがプリントアウトされていないとマズいのだ。仕事をもらうチャンスを失うかもしれない。本当にマズい!
結局、血相変えて買った店に持ち込んだのだが‥‥‥‥店員は何やらカートリッジの奥に指を差し入れると、僕に向かってニッコリ。見ると異常を伝えていたメッセージが消えていた。え!? 直ったの? そう、解決。たった2秒で直ったらしい。


なんだかよくわからないけれど、カートリッジの横に付いてる基盤の上の小さすぎてちっとも目立たない白くて変なスイッチを軽く押すと直るらしい。
液晶にメッセージが出たらそうしろ、とのこと。
気が抜けた。なんだかバカバカしくなって家路についた。
この騒ぎでいったい何時間を費やしたのだろう。往復のタクシー代にも泣きたい思いだ。


今回は冗談のようなハナシだが、考えてみると、こうした備品の故障・不具合に最初から最後まで関わったのは初めての経験だ。これまでは機械に強い部下がサクッと直していたし、また手に負えないような状態のときは業者を呼んでこれまたサクッと解決していた。その間、僕は彼らのケツを叩き、そして復旧のメドの報告を聞くのみだった。誰かが必ず、解決してくれていたのだ。
これからはすべて自分でやらなければならないと思うとゾッとする。さらにこういうことって、今日みたいに一番起こってほしくないタイミングで起こるんだよな。
しかもここは日本じゃない。アクシデントを解決しようとすれば、また別のアクシデントが生まれるのだ。



しかしなぜ、プリンター改造しちゃったんだろう。

まあ、まだ買ったばかりだ。劇的なるコスト効果を実感できるのはもう少し先のはずだ。チクショウ、楽しみにしててやる。



夕刻よりデータ整理を続け、夜は約束していたH氏との食事。素朴なタイ料理とシンハービール。彼はいい人だ。仕事につながることを願う。

夜間に雨。セブンイレブンで明日の食材を買い、帰宅。データ整理を続ける。タイ語学校を休んでしまったことが心残り。



現在、改造プリンターの調子はいい。


No.2
2010/08/09 (Mon) 00:01:38

8時頃起床。分厚い雲間から強烈な太陽が見え隠れしていた。
今日も朝から暑い。襟元が汗でびっしょりになったTシャツを洗濯機に放り込み、そのままスイッチを押す。コーヒーとトマトで簡単な朝食。シャワーを浴び、掃除機をかけ、洗濯物を干す。主婦みたいだ。


今日は部屋にこもる、と決めていた。やらなければいけないことがあまりにも多い。営業ツールづくりに向けての過去の作品データの整理だ。この『過去の作品』がなければ話しにならない。自分に何ができるのかをどれだけ熱弁したところで、そこに目に見える実績がなければすべてが白々しくなるだろう。
しかしこのデータ整理がスムーズにいかない。そもそも過去のデータ自体のファイリングがけっこうランダムであり、必要なものを取り出すまでに思いのほか時間がかかる。こういったことも僕の過去の反省点だ。いつかやらなきゃと思っているうちに膿みがたまり、澱が生まれるのだ。そのシワ寄せはすべて『現在』に返ってくる。
考えてみれば、事前に整理さえできていれば大量のCD-ROMを段ボールでタイに送る必要なんてなかったのだ。荷物はもっとスリムでコンパクトになり、手荷物で可能だったかもしれない。結局、時間とコストの無駄使い。ああ、何をやっても猛省ばかり。


途中、休憩がてらインターネット回線の月額料金を払いに近所の『TESCO Lotus』に行った。ここは広大なるワンフロアに食料品から日用品、衣類、電気製品など何でも揃っているスーパーマーケットだ。入居以来、僕の部屋にやって来た物の90%がここで購入した商品である。そんな僕は超のつくお得意様なのだが、いつだって誰も僕のことには関心がないようだ(あたりまえか!)。
フードコートを抜けて公共料金の支払いカウンターに行く途中、テイクアウトの惣菜を買った。ご飯が付いた、いわゆる弁当だ。25バーツ。日本円にして約80円くらいか。チキンのカレー炒め、そして豚の挽き肉と目玉焼き。夕食のぶんも含めて種類の違うものを二つ選んだ。


午後も相変わらず四苦八苦しながらデータの整理。幾度かの休憩と夕食を経て、さらに整理を続けた。それでもCD-ROMの山は一向に減らない。
しかしながら最初こそデータの山を恨めしく見つめてはいたが、今ではこれこそが僕の歴史の一部なのだという心境だ。データを開くたびに訪れる過去との遭遇。もう忘れてしまっていたことも、データを開いた瞬間、その当時のすべてが鮮やかに蘇える。クライアントの担当者の顔、打ち合わせの風景、撮影現場の空気、かつての部下たちの顔‥‥。
過去が連れて来る懐かしさと悔しさ。と同時に、次第にみなぎってくる忘れかけていた自信。
そう。僕はこれだけのことをやってきたのだ!


だが、そんな感慨にふけりながらの整理が、より作業の手を遅らせていたのも事実である。

今日はここまでにしよう。
明日はタイ語学校の日。ちょっと復習でもしておくかな。



そういえば今日の作業は、まちがいなく過去の復習だった。
それらはきっと未来への予習に直結していると信じたい。
No.1
2010/08/07 (Sat) 19:23:12

2008年9月、僕がオーナーをしていた会社に税務署が入った。
あっという間に売り掛けが押さえられ、創業14年目にして倒産。
夜逃げ同然で事務所を引き払い、現状を察してくれた恩人S氏に誘われるまま、社員を連れてS氏のグループ企業の傘下に入る。
残ったのは支払いの山々と、督促電話の数々。
土地と自宅を処分し、そして離婚。三人の娘の親権は相手方に。
ダメージに心折れそうなとき、きっと、自分がとっていた行動は己のことしか見えないものだったのだろう。一人、また一人と、かつての部下が辞めていった。
会社、仲間、家、家族。一年後には、そのすべてを失っていた。
ーーーー再生したい。しかし、その強い想いは空回りを続けるだけ。
周囲からは煙たがられ、誰も僕に付いて来る者はいなくなった。
大した成果も挙げられない僕は、やがて自分の居場所もなくなり、2010年春、退社。


これが僕の現在までの二年間である。


こんな男がブログをはじめようというのだ。いったい誰が読みたいというのか。
それは現実逃避への媒介か。そこにあるものは人生の落伍者の愚痴か。


この二年間で心から感じたことがある。それは、自分がこんなにも弱い人間だったのかということ。
修羅場の一つや二つ、くぐり抜けてきた男だと思っていた。
いつも若い部下たちに囲まれ、人情に厚く、そして常に大きなビジョンを掲げて情熱的に生きる男。
そんなふうに本気で思っていた。自分のことを。
しかし現実には、ちょっと横槍が入っただけで守るものも守れず、底辺から見事に崩れてしまうような『弱い男』であり、さらにその横槍も自業自得の果て。加えて『甘い男』でもあったのだ。
これまでの人生の大半を錯覚し、それに麻痺しながら生きてきたのかと思うとゾッとした。
そんな男だもの、人生初めての打撃に対し迅速に立ち直ってみせるパワーなんて備えているわけがない。
僕は初めて気づいた事実に愕然としつつも、そんなふうに己を受け入れた。
二年かかった。


だからこそ生きたい。もう一度、本当の意味で人生を味わいたい。
ゼロに帰る。いや、決してゼロではない。
失ったものは大きいが、20年必死にやってきた実績と経験までをも喪失したわけではない。
モノづくりが好きだ。コピーライターからクリエイティブディレクターへ。
さまざまな広告制作、数々の販売プロモーション。手がけてきた仕事で、多くの人々を喜ばせてきた自負がある。
もう一度、やってみよう。


僕は新天地を海外に求めた。
タイ・バンコク。政治闘争のまっただ中。混沌とした街に渦巻くエネルギー。
不潔で不親切で不愉快な街。しかし、ナチュラルでラジカルでチャンスに溢れた街。
晩春から準備に入った。この街でやっていくのは大変だ。心底そう思うが、何処で何をやっていくのも大変なのだ。
年金暮らしの両親に呼ばれ、説明を求められた。それは初めて僕に見せる表情だった。
死にながら生きていた二年間をしっかりと超えていきたい。改めてそう思った。
やがてビザを取得。そしていよいよこの夏、僕は本格的にタイにやって来た。
まずはタイ語学校への入学。アイウエオからのスタートだ。



たくさんの人に迷惑をかけ、たくさんの人が離れていき、
たくさんの人にまだ会えず、たくさんの謝罪の言葉も伝えきれていない。
僕のバンコクでのスタートを、いったい何人の人たちが祝福してくれるだろうか。

たぶん、あまり、いないかもしれない。


バンコクは雨季。毎日、嵐のようなスコールが街を駆け抜けていく。
慣れない土地での生活にとまどうことばかりだが、
朝から晩まで実にいろいろなことを考える。
これからの人生は今までの人生の時間より少ないかもしれない。
だからやるべき事をどう作り、それをどのようにやっていくのか。
ここは外国だ。目標を見失った瞬間、一気に堕ちていくだろう。


みんな、すまなかった。本当に迷惑かけました。しかし今は僕をバンコクで頑張らせてくれませんか。

そんな思いで僕は、ここに言葉を吐露していく。
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Iwao Matsumoto
性別:
男性
趣味:
創作と観賞 料理 ANNA
自己紹介:
厄年とはいえ、自業自得のミスで会社が倒産。初めて知った世の中の厳しさにもがきながら、新天地をタイ・バンコクに求めた男。日本で失敗した中年男が激動のバンコクでどこまでやれるのか? デザインやら何やらといった得意分野は果たして通用するのか?

決して焦らず、しかし着実なスピードで、一歩一歩進んでいきたいと思う今日この頃。善くも悪くも希代のロマンチスト。
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