いま、何か一曲かけてやるよと言われれば、
迷わず『スローなブギにしてくれ』と答えるだろう。
声がふるえなければいいが、と思いながら。
No.7
2010/08/14 (Sat) 19:23:26
8時頃起きる。パンにマーガリンを塗っただけの簡単な朝食。そのあと歯を磨き、顔を洗った。鏡に映った僕はまた少し痩せたようだ。
今日は13日の金曜日。何事も起こらなければいいが。
しかし、いきなりその『何事』が起きた。
またもやプリンターがおかしい。出てくる用紙に何も印刷されてこないのだ。何度やっても。
困った。本当に困った。今日は午後から飲食店の取材がある。その資料をネットから取り出したいのだが、PC画面の情報はいっこうにプリントされない。仕方なくN(プリンター購入時に付き添ってもらった友人)に電話した。僕の今日の予定を聞いた彼は、取材前に彼の家までプリンター本体を届けてくれれば僕が取材をしているあいだにショップに持ち込み、必要であれば修理の依頼をしてくれるという。その線でよろしく頼む、と僕はお願いした。
さあ、そこからが大変。まず取材のための店舗情報をPC画面からすべて書き移す。凄い情報量。かなりキツイ。
次にプリンターを運び出すべく準備。電源やら回線ジャックやらを取り外し、簡単に梱包。そして急いで着替えてスタンバイ。しかしアパートのフロントにタクシーを呼んでもらっていたのだが、約束の時間になっても一向に車が来ない。催促に次ぐ催促。やっと来たタクシーに乗ったはいいが、なんだか違う方向を走っているようだ。言葉が喋れないとわかるとバンコクのタクシーは途端にタチが悪くなる。遠回りしてバーツを稼ごうとするのだ。慌てて指摘したがそこは一方通行の道だったので引き返すことができず、結局かなりの遠回りとなってしまった。Nの家は僕のアパートからは本当に遠いのだ。まったくこのプリンターは高くつく。
ようやくNの家の近辺まで来たが、彼のマンションは通りの反対側。やはり一方通行の道なので正面に出るにはそこからまた、かなり走らなければならない。冗談じゃない。これ以上カネが使えるか! 僕は運転手に「ここでいい」と意志表示し、車を降りた。あとはプリンターを抱えて歩いていくことに決めたのだ。
かつてのように荷物を持ってくれる部下はいない。クーラーの効いた社用車もない。
重いプリンターの上にカバンを乗せて、さらに重くなった忌々しい荷物を両手で抱えて歩きだした。とたんに全身から滝のような汗が吹き出す。
そして今度は、まるでこのタイミングを見計らったかのように雨が降り出した。僕がいったい何をやったというのだ。人々にかけた迷惑はまだ許されないのか。まだ罪は晴れていなのか。‥‥‥本当にツイてない。
雨でプリンターを濡らさないよう体でブロックし、泣きたい思いで歩き続けた。パーマをかけた髪がみるみる無惨な状態になっていく。汗にまみれ、雨に濡れ堕ちている中年男。ショウウインドウに映った自分を見たとき、僕の疲労はさらに深くなった。
やっとの思いでNの家に。挨拶もそこそこに僕は飛び出した。まさか取材に遅れるわけにはいかない。
BTSを降り、駅から現地まで走った。息が上がった。疾走する僕に何人ものタイ人たちが驚いて道を開けた。
僕は40過ぎて何をやってるんだろう。あまりにも惨めだった。悔しさに本当に涙が出そうになった。こんなことで負けてたまるか、こんなことで僕の過去を棒に振れるか! 本気でそう自分に言い聞かせていた。
スクンビットの日本料理店で取材を終えた頃、街には夕暮れの足音が忍んでいた。
すごい脱力感だ。そして空腹感。力の抜けた全身を引きずりながら道端の屋台の椅子に腰掛け、とりあえず一番安いガッパオを注文した。そのとき携帯電話が鳴った。建築デザイナーのOさんからだ。先日のS社長からの宿題についてアドバイスをもらいたく、会っていただきたい旨を昨日Oさんに連絡しておいたのだ。彼は「今これからなら会える」とのこと。オーダーをキャンセルし、再びダッシュ。
Oさんとの会談を終え、帰宅。
すぐにシャワーを浴び、缶ビールを一本。腹が減り過ぎて食欲がない。
魚の缶詰を開け、少しつまんだ。
Nからの連絡によるとプリンターは故障しているわけじゃないらしい。クリーニングしただけで瞬時に解決したとか。
またもや馬鹿馬鹿しい話しだ。無知にもほどがある。
「超アナログ人間なんですね~!驚きました」とN。
何とでも言ってくれ。
窓の外は今夜もスコール。まるで神が下界に怒りを叩き付けたかのごとく、激しくて分厚い雨のカーテンが街じゅうを飲み込んでいる。
なんだか疲れた。
スコールよ、もう何から何まで、洗い流しといてくれ。
今日は13日の金曜日。何事も起こらなければいいが。
しかし、いきなりその『何事』が起きた。
またもやプリンターがおかしい。出てくる用紙に何も印刷されてこないのだ。何度やっても。
困った。本当に困った。今日は午後から飲食店の取材がある。その資料をネットから取り出したいのだが、PC画面の情報はいっこうにプリントされない。仕方なくN(プリンター購入時に付き添ってもらった友人)に電話した。僕の今日の予定を聞いた彼は、取材前に彼の家までプリンター本体を届けてくれれば僕が取材をしているあいだにショップに持ち込み、必要であれば修理の依頼をしてくれるという。その線でよろしく頼む、と僕はお願いした。
さあ、そこからが大変。まず取材のための店舗情報をPC画面からすべて書き移す。凄い情報量。かなりキツイ。
次にプリンターを運び出すべく準備。電源やら回線ジャックやらを取り外し、簡単に梱包。そして急いで着替えてスタンバイ。しかしアパートのフロントにタクシーを呼んでもらっていたのだが、約束の時間になっても一向に車が来ない。催促に次ぐ催促。やっと来たタクシーに乗ったはいいが、なんだか違う方向を走っているようだ。言葉が喋れないとわかるとバンコクのタクシーは途端にタチが悪くなる。遠回りしてバーツを稼ごうとするのだ。慌てて指摘したがそこは一方通行の道だったので引き返すことができず、結局かなりの遠回りとなってしまった。Nの家は僕のアパートからは本当に遠いのだ。まったくこのプリンターは高くつく。
ようやくNの家の近辺まで来たが、彼のマンションは通りの反対側。やはり一方通行の道なので正面に出るにはそこからまた、かなり走らなければならない。冗談じゃない。これ以上カネが使えるか! 僕は運転手に「ここでいい」と意志表示し、車を降りた。あとはプリンターを抱えて歩いていくことに決めたのだ。
かつてのように荷物を持ってくれる部下はいない。クーラーの効いた社用車もない。
重いプリンターの上にカバンを乗せて、さらに重くなった忌々しい荷物を両手で抱えて歩きだした。とたんに全身から滝のような汗が吹き出す。
そして今度は、まるでこのタイミングを見計らったかのように雨が降り出した。僕がいったい何をやったというのだ。人々にかけた迷惑はまだ許されないのか。まだ罪は晴れていなのか。‥‥‥本当にツイてない。
雨でプリンターを濡らさないよう体でブロックし、泣きたい思いで歩き続けた。パーマをかけた髪がみるみる無惨な状態になっていく。汗にまみれ、雨に濡れ堕ちている中年男。ショウウインドウに映った自分を見たとき、僕の疲労はさらに深くなった。
やっとの思いでNの家に。挨拶もそこそこに僕は飛び出した。まさか取材に遅れるわけにはいかない。
BTSを降り、駅から現地まで走った。息が上がった。疾走する僕に何人ものタイ人たちが驚いて道を開けた。
僕は40過ぎて何をやってるんだろう。あまりにも惨めだった。悔しさに本当に涙が出そうになった。こんなことで負けてたまるか、こんなことで僕の過去を棒に振れるか! 本気でそう自分に言い聞かせていた。
スクンビットの日本料理店で取材を終えた頃、街には夕暮れの足音が忍んでいた。
すごい脱力感だ。そして空腹感。力の抜けた全身を引きずりながら道端の屋台の椅子に腰掛け、とりあえず一番安いガッパオを注文した。そのとき携帯電話が鳴った。建築デザイナーのOさんからだ。先日のS社長からの宿題についてアドバイスをもらいたく、会っていただきたい旨を昨日Oさんに連絡しておいたのだ。彼は「今これからなら会える」とのこと。オーダーをキャンセルし、再びダッシュ。
Oさんとの会談を終え、帰宅。
すぐにシャワーを浴び、缶ビールを一本。腹が減り過ぎて食欲がない。
魚の缶詰を開け、少しつまんだ。
Nからの連絡によるとプリンターは故障しているわけじゃないらしい。クリーニングしただけで瞬時に解決したとか。
またもや馬鹿馬鹿しい話しだ。無知にもほどがある。
「超アナログ人間なんですね~!驚きました」とN。
何とでも言ってくれ。
窓の外は今夜もスコール。まるで神が下界に怒りを叩き付けたかのごとく、激しくて分厚い雨のカーテンが街じゅうを飲み込んでいる。
なんだか疲れた。
スコールよ、もう何から何まで、洗い流しといてくれ。
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HN:
Iwao Matsumoto
性別:
男性
趣味:
創作と観賞 料理 ANNA
自己紹介:
厄年とはいえ、自業自得のミスで会社が倒産。初めて知った世の中の厳しさにもがきながら、新天地をタイ・バンコクに求めた男。日本で失敗した中年男が激動のバンコクでどこまでやれるのか? デザインやら何やらといった得意分野は果たして通用するのか?
決して焦らず、しかし着実なスピードで、一歩一歩進んでいきたいと思う今日この頃。善くも悪くも希代のロマンチスト。
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